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フォアグラは癌の元?

フォアグラは、キャビア・トリュフと並んで世界三大珍味と称される食べ物です。フランス語で「フォア(foie)」は肝臓を、「グラ(gras)」は脂肪を意味し、つまり両者合わせて「脂肪肝」ということになります。ガチョウやカモに強制的に多量のえさを与え、脂肪だらけになったその肝臓が食用に供されるわけです。(最近は、動物虐待につながるとしてこの料理を禁止しようとする動きもあるそうですが。)
 人間も過剰に栄養を摂り続けると肝臓がフォアグラ様になります。超音波検査を行うと、ギラギラした霜降り状態の肝臓が観察され、脂肪肝と診断されます。昔は「こりゃ脂肪肝ですね。治療はやせることです。太りすぎを何とかしましょう。」くらいですませていました。しかし、その脂肪肝の中に、肝硬変や肝臓癌に至るものがあるっていうことになってきたから話しが穏やかではありません。こうした重症の脂肪肝をnon-alcoholic steatohepatitis―日本語では「非アルコール性脂肪性肝炎」―その頭文字をとってNASH(ナッシュ)と呼びます。今回はそのNASHについて取り上げましょう。(この12月14日、たけしの「みんなの家庭の医学」という番組でNASHが紹介されるということだったので見てみましたが、医療番組というより料理番組といった体(てい)でした。糖尿病や高血圧・脂質異常症・メタボリックシンドロームとの関係をもう少し掘り下げてあればよかったのに、と思いました。)
 
・まずNASHの症状は?
基本的に肝臓病ではなかなか症状が出ません。肝臓のことをsilent organ(沈黙の臓器)というくらいです。NASHという病気も自覚的には症状がなく進むから、ちと厄介です。

  ・では、NASHの診断は?
どうやってこの病気を見つけるのか。それはまず血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPといった検査値に異常がないか、つまり肝機能障害がないかどうか、が診断の端緒になります。肝機能検査にもし異常があったら、肝障害を引き起こす他の原因がないかどうかをチェック。例えば、B型・C型肝炎ウイルスやアルコールの過飲、そういった要素がないのに肝臓の数値が高い、そして肥満・糖尿病その他の生活習慣病を有していればこの疾患の可能性がある。その後はエコーやCTといった画像診断が必要です。ただし、確定診断は組織診断を必要とするため、 肝生検でのみ可能です。

 ・NASHの治療法は?

肥満や糖尿病を合併することが多く、それらの治療が中心となります。特に内臓脂肪の是正が重要で、内服薬では糖尿病治療薬であるピオグリタゾンが効果的とされます。脂質異常症の治療薬であるスタチン、エゼチミブやフィブラートも使われます。 そのほかARBという種類の降圧剤も。でも、根底にある病因は内臓脂肪の蓄積ですから、最も有効な治療法は生活改善・体重是正です。まずはこの疾患を甘く見ず、生活習慣を見直し、できるだけ早く肝機能を正常化させることが重要です。

N−日本人も、A−アメリカ人のように、S−すごく、H−肥満してきた。これがNASHの本態であることをお忘れなく。

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