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体内時計の異常と生活習慣病

「生活が不規則だと病気になりやすい。」それは体内時計の失調が主な原因のようです。東京女子医大に東医療センターという分院があります。
 そこのセンター長で、大塚邦明先生とおっしゃる先生のお話を伺う機会がありました。    大塚先生はわが国の「時計医学」では第一人者の方です。
 今回は、大塚先生のお話をかいつまんでご紹介できれば、と思います。

  時計遺伝子を司る指揮者―生体リズムの中枢―は脳に存在し、これが親時計で、そこから自律神経系の連絡網と副腎皮質ホルモンなどのホルモン系の連絡網を介して末梢の子時計へと生体リズムは伝わっていきます。
 子時計は全身の細胞にあり、あたかも交響曲を奏でる個々の楽器のように、親時計に連動しつつ、それぞれ時を刻みます。このような、体内時計システムの流れのどこかに不協和音が生じたら、「夜が来たら眠くなる。」というリズムが狂ってしまって、体調が崩れてしまうだろうってことは容易に想像がつきますね。
 体内時計の異常は、自律神経系やホルモンの失調、ひいては種々の生活習慣病をも連れてきて、最終的には寿命を短くしてしまうといいますから「夜、眠れない。」にしろ、「夜、眠らない。」にしろ、健康にとっては非常に重大な問題です。
 体内時計〜時計遺伝子の異常によってどういった病気がもたらされるか、ざっと挙げてみましょう。
 まずは、メタボリック症候群。時計遺伝子異常のあるマウスでは睡眠・覚醒・活動・摂食のリズムが乱れ、成長とともにメタボリック症候群となるそうです。これは、食欲を抑えるホルモンや食欲を促すホルモンの濃度に異常が生じ、食欲の調節障害がもたらされていることが原因のようです。
 次に糖尿病。体内時計の異常により不眠が惹起されれば、ストレスホルモンが上昇しますが、ストレスホルモンには血糖を上昇させる働きがあります。 さらに、時計遺伝子を取り除いたマウスでは、インスリンの分泌が減少する、という報告もあります。この、不眠時のストレスホルモンは、片方では骨を脆くする働きもあります。つまり、生体リズムの失調は骨粗鬆症も惹起することになります。
 血圧はどうでしょう。健常な人の血圧は、夜間には昼間より下がっているのが普通です。しかし、時計遺伝子変異マウスでは、食塩を溜め込むホルモンが過剰に作り出されるため、このリズムが消失し、夜間休息時の血圧低下が得られなくなっているといいます。 さらに、癌の発症も。時計遺伝子群は発癌を予防し、癌の成長を抑制する効果を持っていることが明らかにされています。時計機構の消失が細胞周期異常を生み出し、癌化に繋がっていく機構が考えられています。
  このように非常に重要な役割を担っている体内時計ですが、年齢とともにそのリズムは崩れやすくなります。
 では、体内時計をきちんと働かせるためには、普段の生活でどう心がければよいのでしょう。朝の太陽光と、きちんとした朝食とが重要な役割を担っている、といいます。朝に浴びる光の強さと、その持続時間が重要。逆に、夜に光を浴びると生体リズムが遅れますので、夜の光は禁物だそうです。起床時間を一定にして、起きたらすぐカーテンを開けて外の光を入れるのがいいですね。
 また、朝食をきちんと摂ることが体内時計を賦活化してくれるのだそうです。夜から朝にかけての空腹の時間が長いほどよく、決まった時間に食べるのが効果的です。逆に夕食を沢山とりすぎると時計の針が遅れ、朝食による体内時計のリセット効果が薄れてしまうそうです。朝食には米やパンがよい。そのほか、朝の緑茶や散歩、顔を洗ったり、髪をすいたり、など。
 退職してお昼の時間が空いておられる方などは、ボランティア等で生活にメリハリをつけるのも大事なことです。
  これらのことは、認知機能の低下予防にも重要そうですね。

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