糖尿病関連情報

糖尿病予防 養生訓

糖尿病を予防する

以下は安佐市民病院勤務時代にトピックスとしてホームページに掲載していただいた記事です。
実はこの、「糖尿病予防のための標語」ないし「糖尿病合併症予防のための標語」は「糖尿病養生かるた」として作成したものの一部でした。
今回自分のホームページに掲載するにあたり、オリジナルの養生訓も後半部分に載せております。
今も安佐地区の糖尿病友の会新年会ではこの養生訓を巨大カルタにして勉強と懇親を兼ねて楽しまれています。


糖尿病の一次予防・二次予防・三次予防

 今回は増加している生活習慣病の代表選手の一つ糖尿病をとりあげます。
 1997年の推計で糖尿病の方は日本全国でおよそ690万人といわれましたが、2009年の糖尿病有病者は男性520万人、女性560万人、総計1080万人へとさらに増加することが予想されています。まさに国民病です。
では糖尿病は何が問題なのか。

 糖尿病という病気はただ血液中の糖分が高くなる、という単純な病気ではありません。糖尿病で問題なのは、いわゆる「合併症」です。血管をむしばむ慢性合併症により少しずつ生活の質(QOL)が低下していくのが怖いのです。
 合併症には神経障害・網膜症・腎症といった糖尿病特有のものと、糖尿病に必ずしも特有ではありませんが、糖尿病があることで非常に発症してきやすくなる動脈硬化とがります。動脈硬化は脳血管障害(脳梗塞など)・心血管障害(心筋梗塞、狭心症など)・閉塞性動脈硬化症(足の血管の狭窄、閉塞)といった病気をもたらします。
 このような合併症が出てくると、どんどん生活の幅が狭められていきます。こういう合併症を避けたい。これらの合併症で苦しむ事態に陥ることを防ぐのが糖尿病治療の真の目的なのです。

 では、糖尿病合併症で将来的に苦しむ人を少なくするにはどうすればよいでしょうか。予防的な方策として三つの柱があります。

1,健康な人が糖尿病になるのを予防する。

2,糖尿病の人を早期に発見することで早期に治療を行い、合併症が出現するのを予防する。

3,糖尿病の方の適切な治療を行うことにより合併症の発症・進展を予防する。

これらが糖尿病の一次予防・二次予防・三次予防です。

1.糖尿病になる人を減らすには・・・
 肥満・過食・運動不足・ストレスといった環境要因が加わるほど健康な方が糖尿病となるリスクは高くなります。つまり、国民全体が肥満・過食・運動不足・ストレスといった糖尿病発症の危険因子を認識し、これらをできるだけ来さないようにする啓蒙が重要なのです。
 ここで、「過食」といいましたが、どうもカロリーの摂りすぎというよりも、脂肪の摂りすぎが関連するらしいのです。また食品の中で食物繊維の摂取は糖尿病予防に働くことがわかっています。野菜類をもっと多く摂るよう働きかけることも重要です。特に近親者に糖尿病の方がいらっしゃる場合は、より強力にこれらの事項の啓蒙をはかる必要があります。

2.糖尿病の方の早期発見には・・・
 これは、検診の占めるウェートが大きいといえます。検尿だけでなく血糖検査、また糖尿病コントロールに用いられる指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という検査を検診に組み込むことによって、より早期に糖尿病の患者さんを見つけだすことができるようにはなっています。しかし当たり前ですが、いくら検診の精度が高くても、その検診を受けなければ異常は見つからないのです。重要なことは検診をできるだけ多くの方に受けていただくことです。糖尿病を放置することの怖さが一般の方にもっと正確に伝わって、地域で、職場で確実に検診を受けることのできるシステムが必要です。

3.糖尿病の方の適正な治療とは・・・  
これに関しては、医療スタッフも医学の進歩においていかれないよう勉強し、しっかりと知識を持っておく必要があります。糖尿病は血糖を検査してそれがコントロールされていればいい、というような病気ではないのです。合併症がどういう方に多いのかは、どんどんデータが積み重なってきています。もちろん血糖が高ければ高いほど(HbA1cが高ければ高いほど)起こりやすいといえます。さらに血圧が高ければ高いほど起こりやすいこともわかってきました。また、肥満すればするほど血糖、血圧、脂質といった危険因子が増悪し、動脈硬化が起こってきます。これらをコントロールしながら、合併症が忍び寄ってきていないかどうかを時々チェックする必要があります。神経障害や網膜症、腎症のチェックだけでなく、動脈硬化のチェックが重要です。

 さて、これらの一次〜三次予防に関して下記のように覚えやすいフレーズとしてみました。

糖尿病の一次予防
(頭文字が「ひろしま」となっています。)

・ひまんひとつがまんびょうのもと(肥満一つが万病の元)

・ろうかよぼうはほこうから(老化予防は歩行から)

・しぼうをへらしせんいをふやせ(脂肪を減らし繊維を増やせ)

・まあるいこころですとれすしらず(まあるい心でストレス知らず)

糖尿病の二次・三次予防
(「ひろしま」のつぎはやはり「おこのみやき」でしょう。)

・おしっこでみるじんしょうがい(おしっこでみる腎障害)

・ことしもいちどがんていけんさ(今年も一度眼底検査)

・のーとにつけてるえーわんしー(ノートにつけてるA1c)

・みてさわってあしのてんけん(見て、触って、足の点検)

・やっておこうふかしんでんず(やっておこう負荷心電図)

・きになるけつあつきちんとかんり(気になる血圧きちんと管理)

 少しずつでも、糖尿病発症予防にはなにが必要か。また重篤な糖尿病合併症を予防するのに重要な事項はなにか、が理解されれば幸いです。




糖尿病養生訓(オリジナル版)

片岡内科クリニック  片岡 伸久朗

江戸時代にはすでに貝原益軒が「養生訓」の中で、満腹するほど食べるのは健康によくないことを示しています。
今回、糖尿病患者さんに覚えておいていただければ、という項目を、彼の養生訓に倣って作ってみましたので参考にしていただければ幸いです。

あ あしはわがみ;足はわが身

糖尿病の一番の治療は動機づけです。その意味で、糖の治療を怠っていたらこうなりますよ、ということでよく出てくる写真が壊疽の写真だと思います。まず、この写真を持ってきたわけですが、「明日はわが身」という慣用句をひねっています。糖尿病への取り組みがいい加減であればこういうことも将来の自分に降りかかってくるかもしれない、という意味も含んでいます。

い いちびょうそくさいとうにょうびょう; 一病息災、糖尿病

糖尿病があることで、食事や運動に気をつけ、かえって息災に生きることができる、ということを示しています。マイナスのイメージばかり持たずに、ポジティブに生きましょう。

う うつまえのてあらい;打つ前の手洗い

注射や血糖自己測定を行う前にはきれいに手を洗っておくべきです。

え えこーでわかるどうみゃくこうか;エコーでわかる動脈硬化

最近では頚動脈の内膜中膜複合体の肥厚度をエコーで測定することで、ある程度頭の血管の動脈硬化を推定することができるようになってきました。

お おいておきたいぐるかごん;置いておきたいグルカゴン

これは、低血糖により意識障害が出現して、物を食べたり飲んだりできなくなったときの場合の、注射、グルカゴンについてのことです。 グルカゴンは、肝臓に蓄えられた糖分を血中へ放出する作用がありますので万が一のときには家族の人に低血糖時の処置としてこの注射を打ってもらわれれば、血糖を上昇させるのに役立ちますが、大事なのは、この注射を打って意識が回復しても、その意識の回復は一時的であり再び放っておくとまた低血糖となりうる、という点です。ですから、この注射を打って意識がはっきりした時点で何か飲んだり食べたりしていただくことです。

か がすがでやすいぐるこばい;ガスが出やすいグルコバイ

新しい薬に食後過血糖改善剤というのがあるのをご承知でしょう。グルコバイ、ベイスンという2種類の薬剤がありますが、グルコバイの方がガスが出やすい、といわれているので、こういう句としてみました。これらの薬は腸の中で働いて、便に排泄される薬で、血糖を下げるというより、上がりにくくする薬剤と考えられます。そのため、肥満や低血糖を起こすことは考えにくく、食事療法の補助的意味合いで用いることのできる薬剤です。

き きがのいでんしとうにょうびょう;飢餓の遺伝子、糖尿病

糖尿病は遺伝的な要素の強い病気と考えられています。ではどういった素因が遺伝しているのでしょう。よく言われるのが、糖尿病の遺伝子は食料の少ない時期を乗り越えてきたタフな遺伝子である、ということです。少ない食料で野山を駆け回って生きてきた遺伝子ですから、インスリンはあまり必要としてこなかったわけです。それが、急速な環境の変化に対応できず、膵臓に負担がかかりすぎてインスリンが足りなくなって糖尿病が発症してきたわけです。

く ぐりこのおまけえーわんしー;グリコのおまけ A1c

昔はグリコのキャラメルにはいろんなおまけがついていましたが、中にはおまけの方が欲しくてキャラメルを買う、といったこともありました。HbA1cをグリコヘモグロビンともいいます。最近では糖のコントロールの指標として、血糖値より、むしろこのグリコのおまけのほうが重要となってきています。血糖値は一瞬のデータでしかありませんので、朝の血糖が良くても昼、夕がどうかはわかりません。赤血球の中で、糖と結び付いているグリコヘモグロビン(HbA1c)を測定し、これを目安とすることが糖尿病の長期的なコントロールに非常に役立つわけです。

け けっとうにょうとうじこかんり;血糖、尿糖、自己管理

糖尿病は測る病気だ、といわれます。体重を測る。食事量を測る。運動量を測る。そして、血糖や尿糖も今では自分で測ることができます。病院に行かないと血糖が上昇しているかどうかがわからない、というのではなくて、自分で時々血糖、尿糖を測って、血糖値が上昇していることを知る。その結果で自分で軌道修正を行っていけるというのが自己管理です。

こ こどもでもよんかいうち;子供でも四回打ち

まったくインスリンの出ない方の場合でも、現在では各食前に、その食事のために必要なインスリンを打ち、就寝前に朝までの基礎分泌を補うインスリンを打つことできちんとコントロールが可能な状態となってきています。小学生、中学生の患児でも一日四回打つことができるようになったのは、以前より注射器も針も随分進化してきたからです。そのため高齢の方でも一日1回とか2回の注射なら簡単にできるものと思います。医師からインスリン注射を勧められている方、思った程のことはありませんので、必要なら注射を行ってみてください。

さ さんたいっしょうこうけっとう;三多一少、高血糖

糖尿病では無症状で合併症が進む、と言うことが少なくありませんが、高血糖が著明となると多飲、多尿、多食といった三つの「多い」が出現し、そのかたわらで、体重が減少する、ということを三多一少、とよくいわれます。こうした症状には体が慣れてしまって症状として感じないことも多いわけです。但し、糖尿病のこわさはこうした症状にあるわけでなく、その症状の陰でひそかに進む合併症にあることはよくご承知のことと思います。

し しんでんずはふかかけて;心電図は負荷かけて

糖尿病では動脈硬化も進みやすいといわれますが、心臓の動脈硬化があっても症状として出てこないことがあります。だから時々心電図検査が望まれますが、心電図は安静時のものだけでは不十分です。階段の昇り降りや自転車漕ぎ、ベルトの上を心電図をつけて歩いたり、といった運動負荷心電図をとることが望まれます。

す すいみんぶそくはすとれすのもと;睡眠不足はストレスのもと

血糖を下げるホルモンは生体内にインスリンしかありませんが、血糖を上げるホルモンはアドレナリンや副腎ホルモンなど5つあります。ストレスが強いとこうしたホルモンが必要以上に分泌され血糖を上昇させます。入院してストレスが改善するとそれだけで血糖値が改善することも時々経験されます。あまり怒ったり、不満に思ってアドレナリンを増やすような生活は好ましくない、というわけです。

せ せいげんはじまるたんぱくにょう;制限始まる蛋白尿

糖尿病は実は腎臓の障害が出てくるとかなり食生活を始め、日常生活が制限されるようになってきます。蛋白尿がどんどん出るようでしたら、食事中の蛋白質は腎臓の負担となってきますので、蛋白の制限が必要となります。運動も腎機能の低下に応じて制限していくことになります。

そ そしゃくがだいじ、のみこむまえに;咀嚼が大事、飲み込む前に

昔から大食いの人は早食いであるといわれます。早食いだと、満腹感を感じるまでに必要以上の量を食べてしまっている、ということになります。しっかり咀嚼して十分に味わって食事をしましょう。そうすれば満腹感も出てくるはずです。

た たちくらみたつならゆっくりてすりもち;立ちくらみ、立つならゆっくり手すり持ち

糖尿病で出てきやすい合併症として糖尿病性神経症があります。神経は長いものが障害されやすく、足の知覚神経の症状であるじんじん、びりびりといったものが出やすいのはご存じと思いますが、細い繊維も障害を受けやすく、そのため自律神経症状が起こりやすいのが糖尿病性神経症の特徴です。自律神経の一つに血管の収縮を司るものがありますが、この障害によりひどい立ちくらみが出現することがあります。血圧が下がりすぎるようなら、血圧を保つような薬も必要ですが、そうした患者さんは早朝とか食事のあととか、急に立ち上がらずにゆっくり体を起こして少しずつ体を慣らして立ち上がる必要があります。ふらっとして倒れないように手すりをもって歩くことも必要です。

ち ちかくのこんびによりとおくのすーぱー;近くのコンビニより遠くのスーパー

運動療法はできるだけ毎日行いたいものですが、継続していくのが困難なことがあります。継続して行くためにはいろんな工夫をしていただければいいのですが、電車やバス通勤にして一駅なり二駅なり手前で降りて歩く、といった方法や、家庭の主婦の方であったら、毎日の買い物に歩いて行く、といった方法があります。このように生活に組み込んだ運動療法のほうが長続きしやすいようです。

つ つきにいちどのえーわんしー;月に一度のA1c

ヘモグロビンA1cは、高ければ高いほど、合併症が出現しやすくなることがわかっています。できるだけ、これを正常に近づけること、しかも、重篤な低血糖を起こさないこと、これらがコントロールの基本となります。

て ていこうせいつよくておこるどうみゃくこうか;抵抗性、強くて起こる動脈硬化

最近よく聞く言葉が「インスリン抵抗性」という言葉です。これはどういう状態かを簡単にお話ししますと、車で例えると、いわば日本の小型車のエンジンにアメリカ車のような大型のボディをつけたような状態といえます。つまり肥満、過食、運動不足といった状態で重くなったボディを動かすのに小さいエンジンながら、ブルンブルンとアクセルをふかして、一生懸命になっている姿を想像してください。最初のうちは何とか動くでしょうが、次第にエンジンがいかれてきます。それが今度はインスリン不足、という状態です。ボディをそのままでエンジンを何とかしようとしても、エンジンはもって生まれたものですからなんともなりません。やはり、ボディーに積みすぎた荷物を降ろすのが先決です。食事療法、運動療法の必要な理由がおわかりでしょう。

と とうせきよびぐんびりょうあるぶみんにょう;透析予備軍、微量アルブミン尿

糖尿病性腎症は、初期には細かい蛋白が尿中に出現してきます。この蛋白は試験紙ではまだ見つからず、微量アルブミンと呼ばれます。この微量アルブミンの段階は、腎臓の障害が可逆的、つまり糖のコントロールを行うことで、腎障害が改善してくる可能性がある、という意味で非常に重要な段階です。この時期を過ぎて、試験紙ですぐわかるような顕性蛋白尿の時期に至るといくらそれからコントロールを改善しても腎臓の障害は元に戻りません。微量アルブミン尿が出るなら、腎症が非可逆的となる崖っぷちに立っていることを認識して、コントロールを改善していくことが必要です。

な なかまはたくさんあるこうかい;仲間はたくさん、歩こう会

糖尿病の人口は日本全体では600万人と推定されています。40才以上の方の10人に一人が糖尿病とも言われます。あなた一人が糖尿病というわけでなく、もうこれは国民病ともいえる状態です。糖尿病の方が集まって一緒になにかを行う機会を持てれば、より闘病意欲も湧くものと思います。当院では一昨年より毎年秋に糖尿病週間の行事として「糖尿病ウォークラリー」を行っています。グループで歩いたあと、ゲームをしたり、クイズをしたりして過ごしていただいていますが、まだまだこの輪を広げていければ、と思っています。

に にんしんのまえのこんとろーる;妊娠の前のコントロール

糖尿病の方でも、合併症がさほど重篤でなければ、健常な方と同様に妊娠、出産を行うことが可能です。しかし、胎児の器官形成期は妊娠初期の6週間であるといわれていますので、妊娠したことがわかってから、さあ、コントロールを始めよう、というのでは遅すぎます。この時期を健常な人と同じ様な血糖コントロール状態で過ごすのが、胎児のトラブルの防止には最も重要といわれます。妊娠する前から血糖をきちんとコントロールしておく「計画妊娠」が重要なわけです。

ぬ ぬるめのおゆでやけどぼうし;ぬるめのお湯でやけど防止

糖尿病性神経症では感覚が次第に障害されることがありますので、小さい怪我などしていないかどうか、足の点検が大事です。足の血行を良くするのに温浴などは有効な方法ですが、湯の温度が熱すぎないよう注意が必要です。足の温度覚も低下していますので、熱湯でも熱く感じないことがあるからです。

ね ねんにいちどのがんけんしん;年に一度の癌検診

現在、糖尿病患者さんの第一の死因は癌であるといわれます。これは、糖尿病患者さんの寿命が少しずつ健常者に近づいてきていて、癌で亡くなる年令まで生きれるようになってきたことを倣しています。糖尿病でずっと病院で診てもらっているから癌にはならない、ということは決してありません。地域や職場での検診があれば、胃や肺、婦人科や大腸の検診などきちんと受けておかれるとよいでしょう。

の のまれるならのむな;飲まれるなら、飲むな

これはもちろんお酒のことです。酒は適量であれば血行をよくしたり、血圧を下げたりストレスの解消になったりで決して悪いばっかりのものではありません。しかし、少し酒がはいることで抑制がとれてしまってすぐ食事療法が乱れてしまう、というような人は、最初から飲まないほうが得策です。

は ばなないっぽんいちたんい;バナナ一本1単位

糖尿病の食事療法の基本は、必要十分なカロリーの中でバランスよく、ということです。そのためになにをどのくらい食べたら良いかを簡単に示してあるのが糖尿病の食品交換表です。以前のものより大きく見やすくなって、使いやすくなったものと思います。

ひ ひどくふるえるていけっとう;ひどく震える、低血糖

ひ;ひやあせ(冷汗)、ど;どうき(動悸)、く;クラクラもしくはくうふくかん(空腹感)、ふるえる;震え、というふうに頭文字を集めて、低血糖の症状を覚えておいてください。

ふ ふとるとでやすいどうみゃくこうか;太ると出やすい動脈硬化

最近では肥満にも種類があって、お尻の周りに脂肪のつく皮下脂肪型の肥満よりも腹がだんだん出っ張ってくる内臓に脂肪の溜まるタイプの肥満のほうが動脈硬化を起こしやすい危険なふとりかただ、ということがわかってきました。この内臓脂肪は血糖も上昇させますが、高血圧や高脂血症も起こしてきます。運動不足や高カロリー食、砂糖の多い食品などは内臓脂肪を増やしやすい、と考えられています。

へ へんでしらべるけとんたい;変で調べるケトン体

これは、インスリン非依存型糖尿病(U型)の方よりもインスリン依存型糖尿病(T型)の方に起きやすいのですが、インスリンが絶対的に不足して、エネルギーとして糖が利用できない状態が続くと、脂肪がエネルギー源として分解され、脂肪の燃えかすとしてケトン体が出現してきます。この状態が続くと、血液が酸性に傾き、やがて意識がなくなることもあります。風邪などで食べられない状態でも、むしろインスリンの必要量は増えていることだってあります。インスリンを勝手に中止したりせずに、血糖の自己測定や、尿のケトン体測定を頻回に行いながら、インスリンを継続することが必要です。

ほ ほうちでいつしかいのちとり;放置でいつしか命取り

むしろこの言葉は今まで検診など受けたこともないような人に教えて上げたい言葉です。皆さんは既に糖尿病の怖さをよく理解されているものと思います。血糖が高くても、直接出現してくる症状はのどの乾きや、多飲、多尿などの漠然としたものでしかありませんが、その陰でひそかに合併症が進行している、というのが、本当にこわい点なのです。

ま まったくえきないきつえんしゅうかん;全く益無い、喫煙習慣

たばこはもちろん発癌物質であり、煙のとおるところ全ての癌の発生を増加させます。また、たばこは動脈硬化の一大危険因子でもあります。糖尿病の合併症が予防の一番の目標なのに、一方で血管を傷める喫煙を行っていては、何のための治療かよくわかりません。最近では禁煙をスムーズに行うための禁煙ガムなども使えるようになってきましたので、そういったものの利用も考え、是非禁煙していただきたいものです。

み みんなでまなぶとうにょうびょうきょうしつ;みんなで学ぶ、糖尿病教室

糖尿病の治療の車の両輪といわれるのはいうまでもなく食事療法、運動療法ですが、実はその前に位置する、それら以上に重要な治療があります。それは、「糖尿病教育」という治療です。糖尿病は自己管理が重要な病気ですが、食事や運動をきちんと継続して行くためには、それらが何故必要なのかを知っておくことが大切です。どうして糖尿病が出てきたか、高血糖をほうっておくと何が起こってくるか、具体的な自己管理の方法など、こうしたことを学のが糖尿病教室です。

む むりなうんどうさけるがかち;無理な運動、避けるが勝ち

運動療法で注意したいのは、運動をしなさすぎるのも困りますが、しすぎるのも却って故障の原因になりかねない、ということです。運動療法を毎日行いなさいといわれたからって、熱があるときや調子の悪いときに一生懸命運動したりするべきではありません。また、血圧や血糖値が極端に高い時も、運動でこれらが逆に上昇したりしますので、控えておく必要があります。

め めんえきいじょうはこうたいでけんさ;免疫異常は抗体で検査

インスリン依存型糖尿病は、自己免疫が原因とされていますが、最近になって、その原因のひとつとされる自己抗体「抗GAD抗体」が測定できるようになりました。インスリン非依存型糖尿病のような形で発症してゆっくりとランゲルハンス島の破壊が進むインスリン依存型糖尿病も、こうした検査で少しずつ診断できるようになってきました。

も もってあんしんてちょうとかーど;持って安心、手帳とカード

インスリン注射を行っている方や、インスリン分泌を促す薬(ダオニール、オイグルコン、グリミクロンなど)を服用している方は、必ず低血糖に対する備えが必要です。その備えは、一つにはすぐ吸収されるような糖分を補給できるものを常に持っておくことですが、糖尿病手帳や、糖尿病カードを持っておくことも大切です。これらには、万が一の時のための受診している医療機関の連絡先、主治医などが記載してあります。

や やるきをうながすえいようそうだん;やる気を促す栄養相談

糖尿病と長くつきあっていると少しずつ気がゆるむことは時々経験されることです。そんなときゆるんだたがを引き締めるには初心にかえって栄養指導を受け直して見られればいかがでしょう。

ゆ ゆたんぽよりもうふ;湯たんぽより毛布

今どき湯たんぽを暖房機具として用いられている方は少ないかもしれませんが、湯たんぽでの熱傷が原因で糖尿病性壊疽が起こってくるケースはまれではありません。

よ よくをいうならろくぱーせんと;欲を言うなら6%

HbA1cは低ければ低いほど糖尿病性合併症の発生率は抑制できる、ということが、有名な北米でのDCCT研究ではっきりしました。そして、頻度は高くないが、HbA1cがたとえ7%でも合併症の出現するケースもあることもわかりました。ですから、欲を言えばHbA1cは6%以下が望ましいのですが、血糖値が正常に近づけば近づくほど低血糖の可能性も増大します。重症低血糖のない範囲で、HbA1c6%を目指したいものです。

ら らくあればくあり、くあればらくあり;楽あれば苦あり、苦あれば楽あり

る るーずででてくるがっぺいしょう;ルーズで出てくる合併症

糖尿病の治療は童話の「蟻とキリギリス」のようなところがあります。キリギリスの考え方は刹那的で、夏の間中楽しく歌って過ごしますが、将来設計というものがないため、あとから後悔してもどうにもならないことになります。糖尿病は、どういったことが合併症を起こしてくることかある程度わかっている病気です。合併症の予防には食事療法や運動療法が必要です。しかし、こうした治療の基本となる食事療法や運動療法は医師が代わって行える類いのものではないわけです。医師ができるのは、それぞれの道の行く手には何が待っているかを指し示すことだけです。どちらの道をとるかは、自分自身で決めることです。あとで後悔のない道を選んでいただきたいと思います。

り りょうりはくふうしだい;料理は工夫次第

糖尿病の食事療法は、1、必要で十分なカロリーを 2、バランスよく というのが原則です。でも、最近の日本人の食生活を振り返ってみると、西欧化した食事により、動物性脂肪や単純糖質が増加しており、この原則を充足しにくくなっているようです。和食を見直してみると、たとえば、冬場の人気No.1の鍋物では、野菜や海草、きのこの類、すなわちビタミンやミネラルが豊富でしかも低カロリー。バランスも取れていて、十分満腹感のあるものと考えられます。こうした食材を上手に使えば、洋食も工夫次第で満腹感のあるものが作れるようです。

れ れすとらんよりまくのうち;レストランより幕の内

最近のファミリーレストランでは、よくメニューにカロリーが表示してあります。それをみてみると外食はかなり高カロリーであることがよくわかります。バランスの点でも偏りがあり、糖尿病の人に適したものとはいいがたい様です。その中で、バランスよく食べやすいのは、やはり幕の内弁当のようなものでしょう。それでも揚げものなど多ければ高カロリーとなりやすく注意が必要です。

ろ ろーそんならかろりーつき;ローソンならカロリー付き

最近ではコンビニでもいろいろな弁当を売っています。コンビニの中で今のところローソンの弁当にだけカロリーの表示があります。参考までに一度見学いただいたら良いかと思いますが、それをみるとおしなべて、コンビニの弁当は高カロリーです。中には一つの弁当で1000カロリーを超えてしまうものも販売されています。この文は、決して、ローソンの弁当を食べなさい、と勧めているのではなく、カロリー表示が非常に参考になるということを申し上げたいのです。

わ わかさをたもつうんどうりょうほう;若さを保つ運動療法

運動療法の効果には、インスリン抵抗性を改善し、血糖を低下させる、高血圧や高脂血症を改善する、骨粗鬆症の予防、など種々の効果がありますが、これらの効果をひっくるめて言うなら『運動は若さを保つのに効果的』ということでしょう。運動は、外見だけでなく、気持ちをも若くしてくれるように思います。できる範囲で運動を行って、体も気持ちも若く保ち、一病息災を目標としましょう。

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