糖尿病関連情報

メタボ予防のための養生訓 (2008.3.15)

左下は慶応大学の伊藤裕教授が提唱しておられる図式です。メタボリックシンドロームから糖尿病や動脈硬化が起こってくる様子をドミノ倒しになぞらえています。一番上流にあるドミノは生活習慣のドミノ。食べ過ぎ・運動不足あるいはストレス・不眠といった環境要因によって内臓肥満が生じます。内臓脂肪は余剰のエネルギーの貯蔵庫ですが、貯蔵庫が一杯になってくると当初はインスリンを過剰に分泌し貯蔵庫になんとか糖や脂肪といったエネルギーをしまいこもうとします。これがインスリン抵抗性というドミノです。しかしインスリンが過剰に出てもこれらを抑えきれなくなって食後の高血糖、高脂血症が起こってくるのです。こういう状態は交感神経を緊張させて血圧も上昇させることとなります。かくしてこれらの危険因子ドミノが重なって動脈硬化(マクロアンギオパチー)が進展していきます。動脈硬化によって起こるのが脳梗塞、冠動脈硬化、閉塞性動脈硬化症 です。
 
                                                          
 
  一方、さらに高血糖のドミノが倒れていくと食後だけでなくずっと血糖値の上昇する糖尿病が引き起こされます。持続的な高血糖に基づくいわゆる糖尿病の三大合併症はその下流にあり、それらが昂じて透析や失明といった結末を迎えることになるわけです。
  より早期にこうした動脈硬化や糖尿病を引き起こしてくるメタボの芽をつみたいと考えた厚生労働省はこの4月から、より厳しい基準にのっとってメタボ健診をスタートさせることにしました。この健診では肥満者の、特に血糖値が高めと考えられる方、空腹時血糖100mg/dl、HbA1c5.2%以上を抽出しますので、こんなに厳しい基準にして引っかかった人みんなを指導する側の態勢は十分なのか?といった疑念は残りますが、まあ、早くからメタボの方に警鐘を鳴らす、といった取り組みということになるでしょう。
  では、この「メタボ」を防ぐには我々はどうしたらよいのでしょう。それが、右上に掲げた養生訓「ひろしま」です。肥満・過食・運動不足・ストレスといった環境要因が加わるほど健康な方が糖尿病となるリスクは高くなるといいます。このうち食事については、ただカロリーの摂りすぎというより脂肪の摂りすぎが関連しているというデータが出ています。また食品の中で食物繊維の摂取は糖尿病予防、心血管病予防に働くことがわかっていますので野菜類をもっと多く摂るよう「脂肪を減らし、線維を増やせ」としました。
  一日に歩く歩数が多いほど生命予後が良いというデータも数多くあります。運動の効果は身体的な面ばかりでなく精神的な面にも及びます。歩行は上のメタボリックドミノの図式にあってどの時点においても予防的な効果を発揮します。「メタボリックドミノ」というライフスタイルの西欧化がもたらした「ドミノ倒し」に対抗できるのは和式の「将棋倒し」。「歩」は将棋の中では最弱の駒ですが、たとえ「歩」であってもこれらをドミノの間に無数に配置することでドミノ倒しをストップすることができます(左下図)。
  重要なのは腹囲の基準をいくらにするか、といった瑣末な問題ではありません。日本人が実際にこの数十年の間にずいぶん太ってきているのです。それが脳梗塞、心筋梗塞といった重大な結果を招いています。具体的な数値が問題ではなく、体重の増加イコール寿命を縮める元となるのだという認識が必要なのです。たった1kgの体重の増加といっても実際にその重みを手にしてみると「これは、体に悪いだろうな」と思わせます。体脂肪1kgの模型(右下図)を皆さん是非手にとってみてください。同様の感想を持っていただけるのではないかなと思っています。

                                                                                                                                                                                                                                  
   

ページトップへ