糖尿病関連情報

高血圧についての三度目の話題 (2009.3.15)

血圧についてこの「かたくり」で述べるのは今回が三度目になるでしょう。一度目は2004年に高血圧学会から血圧治療ガイドライン(JSH2004)が発行された時でした。それに沿って作成した院内掲示が、待合室に張ってある「糖尿病の方の血圧は130/80mmHg未満にしましょう」というものです。二度目は同じく高血圧学会から『家庭血圧測定条件設定の指針』が発刊された時です。その指針でやっと「家庭での早朝血圧は起床後1時間以内に、排尿をすませて食事や内服の前に、座位で1−2分安静のうえ上腕で測定する」というきちんとした定義が出来上がりました。これにより一般の方の家庭血圧は135/85mmHg以上あれば高血圧、ということが示されました。しかし実を言うとそれぞれ「診療所で測った糖尿病の方の降圧目標」および「家庭血圧正常値」は発表されたものの、「糖尿病の方の家庭血圧における降圧目標」は明確にされていなかった、というのが本当のところです。著明な先生方にこの点について講演会などの際にお聞きしてみましたが、その問いに解答を持っておられる先生はありませんでした。今回5年ぶりに高血圧学会のガイドラインが改定され(JSH2009)、この「糖尿病の方の家庭血圧における降圧目標」がやっと提示されるに至ったわけです。そのため三度目ではありますがこの度高血圧の話題を取り上げた次第です。
 今回のガイドラインにおける降圧目標を表にお示しします。これによると右欄の中ほどにあるように糖尿病患者さんの家庭血圧は125/75mmHg未満にしなさい、という実に厳しいものとなっています。ただ、注釈として『診療所と家庭血圧の目標値の差は、診察室血圧140/90mmHg、家庭血圧135/85mmHgが高血圧の診断基準であることから、この二者の差を単純にあてはめたものである。』と記してあります。つまり実際には家庭血圧を指標にしたような介入試験など現時点で存在しないので暫定的にこのくらいのところにしておこう、と決めたことになります。「暫定的に」ということは「まずは適当に」決定されたようなものです。実際には診療所血圧と家庭血圧の差は3mmHgくらいでは、とも言われますので125/75未満でなくては、というよりまずは125/75前後ならいいだろう、と考えていただければと思います。 

          
  
 血圧は低ければ低いほどよい、というスタンスはこの度のガイドラインでさらに鮮明になったといえます。確かに血圧を低く保てばそれだけ細小血管症も大血管症(動脈硬化)も抑制できるという証拠は確実となってきました。しかしこの指針に則って理想的な家庭血圧を追求し125/75前後あるいはそれ未満にしようと思えば一般療法に加えて降圧剤が2剤、3剤あるいはそれ以上必要となる場合もあります。特に若干血糖コントロールを悪化させかねない降圧利尿剤の投与も必要となる可能性も出てくるでしょう。多少のHbA1c上昇以上に降圧のメリットが大きいことも多々ありますのでその点についてもご理解いただき、十分な降圧を達成していただければと思います。 (厳しい降圧を図るためには減塩の徹底が欠かせません。今回の「かたくり」では当院管理栄養士がその減塩を行うための具体的な方法を載せてくれています。)

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