糖尿病関連情報

ビグアナイド剤について (2003.11.15)

今回は糖尿病の内服薬で「ビグアナイド剤」という薬剤を紹介します。一般名で「メトホルミン」、商品名では「メルビン」とか「メデット」という名前がついています。

この系統の薬剤には古い歴史があり、以前からどういう風に効くのかはよくわからないけれど、インスリン分泌を促進するのとは違う作用で血糖値が下がる、と使われていた薬です。でも、この系統の薬剤に「乳酸アシドーシス」という副作用があるということで使用が次第に控えられるようになり、「メトホルミン」もずいぶん長い間封印されたままになっていました。確かにメトホルミン以外のビグアナイド系の薬剤にはたまに乳酸アシドーシスという怖い副作用が出現することがありました。しかし、メトホルミンに関しては、腎不全や心不全などがなければほとんど安全面で問題なく使用できる、ということが明らかになってきました。そのため10年前ごろからまず欧州で再び広く使われるようになり、次にアメリカでもFDA(日本の厚生労働省に相当する)で認可されるに至りました。

この薬のメリットはたくさんあります。

  1. 単独では低血糖を起こさないこと。
  2. 肥満をきたす薬ではないこと。
  3. 薬価が非常に安いこと。
  4. 肥満の方に用いた大規模臨床試験で、ほかの薬剤に比し生命予後がよかったこと。
  5. 他の薬剤との相性もよいので併用療法が行いやすいこと。

以上のようなものがあげられます。
デメリットとしては

  1. 錠剤が少し大きいこと。
  2. たまに胃腸障害があること。
  3. 心不全・腎不全・呼吸不全・肝不全といった病態では乳酸アシドーシスの危険があるので使えないこと。
  4. 血糖降下作用はそこまで強くないこと。(HbA1cにして1%もは下がらないでしょう)

などがあげられます。

最近、このメトホルミンの、更に新しい作用機序が明らかにされました。それは、この薬が、生体内で燃料計の役目をするAMPキナーゼという酵素に働いて、どんどんエネルギーを燃焼させる方向に傾けるというものです。なるほど、特に肥満傾向の方には都合がよい道理です。この薬は糖や脂肪酸といった、エネルギーを消費する方向に体を向けるわけですから、言い換えると運動療法を多少でも補うような薬、ということができるでしょう。
ただし注意しておかなければならないのは、あくまで「補う」だけであって、これさえ服用していたら運動しなくてもOKといった魔法の薬剤ではありません。やはり、いい内服薬でも、実際に体を動かすのには及ばない、ということです。

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