糖尿病関連情報

ご高齢の方の血糖コントロール目標が設定されました

4月9日(土)に今年度の当院講演会を開催いたしました。
演者には、この4月に川崎医科大学准教授に就任された中西修平先生をお迎えし、「年を拾った私の糖尿病治療〜どこまで治療が必要?何に注意が必要?〜」という演題でご講演をいただきました。
日本人全体でも少子高齢化が叫ばれている昨今、当たり前ながら糖尿病患者さんも高齢化してきておられます。
年齢が連れてくる心身の衰え―認知機能や運動能力の低下―をいかに予防していくか、どうやって付き合っていくか、そのためにはどういったことに気を付けたらよいかについて、わかりやすく、具体的に、しかもユーモアをたっぷり交えて、楽しくお話しいただきました。質疑応答も盛り上がり、あっという間に時間が過ぎました。
この稿を借りて、中西先生に深謝致します。

さて、中西先生の着眼点はさすがでした。
糖尿病学会でもご高齢の方の、糖尿病との付き合い方をどうするかは課題となっています。
先月(5/19-21)京都で糖尿病学会が開かれましたが、そのときに最も話題となったものが「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」という、糖尿病学会と老年医学会が合同で出したガイドラインです。 

 その基本にある考え方は、
1、血糖コントロール目標は患者の特徴や健康状態:年齢、認知機能、身体機能、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に設定 
2、重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を 
3、高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に、という3点です。

もっとも、患者個別の目標は設定して治療を行うのは、本来当然のことであり、今回そのお墨付きが得られたということになります。
そのため、医療者側も、患者さん側も、厳格なコントロールを必要としない方での、いわゆる「HbA1c7%の呪縛」から逃れることができ、よかったのではないかな、と思っています。
新しく提示された高齢患者さんの血糖コントロール目標をお示しします。


但し書きとして、「治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する」と記してあります。ちなみに基本的ADLとは、着衣、移動、入浴、トイレの使用などの生活動作、手段的ADLとは買物、食事の準備、服薬管理、金銭管理など、より複雑な生活動作をいいます。

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