糖尿病関連情報

宣伝文句の裏を読む

梅雨に入ったものの雨はほとんど降ってきませんね。
気象庁も少し後悔しているのではないでしょうか、梅雨入り宣言のタイミングを早まったかな、と。
おかげで、診療前のウォーキングを日課とする身としては、順調に歩数を稼げています。また、我等がカープも現在セ・パ交流戦を戦っていますが、マツダスタジアムでの試合もいまのところ着実に消化されていっているようです。

梅雨が過ぎれば、暑い夏。いつも診察時に言っていますが、特にこれからの季節、水分をこまめに摂って頂くことを心がけていただきたい。では何を飲むのがよいか、というのが今回の話題です。
テレビCMでは、いろんな飲料の宣伝が始まっています。
毎年気になるのが「ポ〇リ飲まなきゃ」っていう宣伝文句。
汗かいたらこれを飲まなきゃ熱中症になってしまう、という強迫観念にかられそうです。
確かにコーラやサイダーほど糖分は多くないし、スポーツ飲料っていうくらいだから、なんだか健康的なイメージがあります。
でもちょっと待ってください。糖尿病患者さんにとって本当に健康にいいものかどうか。
この飲み物の成分表を見てみましょう。
そこには砂糖、ぶどう糖果糖液糖、果汁、食塩、酸味料、ビタミンC、塩化K、乳酸Ca、調味料(アミノ酸)、塩化Mg、香料、と書いてあります。
原材料の表示は量的に多く含まれるものから記載されますので、砂糖、ぶどう糖果糖液糖、果汁といった単純糖質が多く入っていることがわかります。
そのカロリーを見てみると、100mlあたり27kcal。
つまり100ml飲んだだけで6.75gのブドウ糖が入ってくることになります。
皆さんの血液中の糖分の総計をご存知ですか?たったの3~5g程度です。
3~5gしか血中にないのに、100mlのポ〇リスエットで、そのトータルを上回る単純糖質を取り込んでしまう。
こうした飲料で血糖値が急速に上昇すると、膵臓にものすごい負担がかかります。
もっと言えば、この飲み物を1.5ℓのペットボトル1本分飲むと、ブドウ糖換算で100g強となりますので、ブドウ糖負荷試験の際に飲用する75gをはるかに上回る量の単純糖質を摂ることになります。
健常な方でもこの飲料を毎日毎日飲んでいると膵臓がばててしまうだろうな、ということは容易に想像されます。
実際僕が安佐市民病院に勤務していたころ、毎年必ず、こういった清涼飲料水を繰り返し多飲することで急激に500mg/dl以上といった大変な高血糖になって入院してこられる方がありました。
清涼飲料水ケトーシスとか、ペットボトル症候群とか言われる緊急の高血糖状態です。若くて、もともと糖尿病のない方でも急速に糖尿病にしてしまうのですから恐ろしいもんです。
「スポーツ飲料」は基本的にサッカーやバスケといった激しいスポーツをされる方の飲み物と思ってください。
ポ〇リスエットをやり玉に挙げましたが、「元気はつらつ」とか「ファイトー、いっぱーつ」といったものも同じようなものです。
また、ヤ〇ルトのシロタ株乳酸菌飲料、これも糖尿病悪化の原因となります。
今月号の「糖尿病診療マスター」という医学雑誌に、毎日たった80mlのこの飲み物を飲むことでHbA1cが6%台前半から8.5%に悪化したと考えられるケースが載っています。
カル〇スやR-1といったものも似たようなものです。
乳酸菌飲料は大腸フローラを改善するから糖尿病によさそう、と思われているかもしれませんが、非常に多くの糖が含まれるため血糖値を急上昇させることになってしまうのです。
基本的に企業はメリットのみを謳ってデメリットはひた隠しと思ってください。
賢い消費者になるには、ボトルやパックの裏側の目立たない形で表示してある部分に着目する―宣伝文句の裏を読む―姿勢が望まれます。
やっぱり単純糖質を含まない飲み物、日本の夏には昔から「麦茶」がベストということです。


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