糖尿病の内服薬は「いろはにほへと」
現時点で、糖尿病の内服薬は7系統あります。「い・ろ・は・に・ほ・へ・と」として、それらの特徴を略記してみましょう。
「いただきます」の時にのむのが『グリニド剤』;速効型インスリン分泌促進薬といわれ、2型糖尿病で低下しているインスリンの初期分泌を行わせる働きがあります。三食前に内服する必要があり、また膵臓にあまり負担もかけたくないので、当院でこの薬の使用頻度は多くありませんが、特に胃切除後の方とか、食後に血糖が著明に上昇しやすい人には有用な場合があります。
―――スターシス・ファスティック・グルファスト・シュアポスト―――
老後でも安心して使える『DPP-4阻害剤』;血糖値の高い時だけインスリンの分泌を促してくれる薬になります。血糖値が高くない時にはインスリンはストップする、だから単独では低血糖を起こさない。そういった意味で、高齢者でも安全に使えます。最近、週に一回の内服でよいものも出ました。
―――ジャヌビア・グラクティブ・エクア・トラゼンタ・テネリア・オングリザ・ザファテック・マリゼブ―――
始めの一手は、やっぱり『BG剤』;BG剤(ビグアナイド剤)の中で、特にメトグルコは高用量の内服を行うことができるようになって、より有用となりました。古くからある薬ですが、まだ作用機序が十分に解明されきってはいない。インスリンを出させるのでなく、インスリンの効きをよくする、といった意味で、その働きは運動に似た側面もあるようです。最近この薬による癌の抑制作用が注目されています。
―――メトグルコ―――
尿に糖を出す『SGLT2阻害剤』;糖尿病の内服薬の中では最も新しいもので、尿糖を出すことで血糖値も体重も減らす効果がある。メタボの大元に効くので、血圧や脂質にも改善効果が及び、その結果心血管疾患を抑制する効果も期待できます。尿糖が多く出ると、水もしっかり出るため、脱水に注意が必要です。
―――スーグラ・フォシーガ・アプルウェイ・デベルザ・ジャディアンス・ルセフィ・カナグル―――
膨化した脂肪細胞を小型にする『チアゾリジン剤』;肥満した方に用いると、やせたと同様の効果が期待できます。脂肪細胞が大きくなると血圧をあげたり、インスリンの効きを悪くしたり、血中の脂質を増やしたりする、いろんな悪い物質を出しますが、この薬はその大型脂肪細胞に作用し、小型にする働きがあります。ただ、実際に痩せるわけではなく、むしろ脂肪細胞の数は増えるため、太りやすいというのが難点です。
―――アクトス―――
β細胞に働きインスリンを出させる『SU剤』;昔からある薬で、価格は最も安い。いわば、膵臓に鞭をあてる薬、とでも言いましょうか。ですからできるだけ少量で用いるのがコツです。鞭をあてすぎると低血糖のリスクもありますし、効果が少ないのに鞭をあて続けると膵臓はへばってしまいます。しかし、使いようによってはまだまだ有用な薬です。
―――グリミクロン・・アマリール・ダオニール・オイグルコン―――
糖の吸収を遅らせるのが『α-GI剤』;糖質の吸収を緩やかにして、食後の急峻な血糖上昇を抑える働きがあります。強い薬ではなく、単独では低血糖も起こさず、初期の糖尿病の方に使われやすいけれど、腸内で糖が発酵してガスが出やすかったりします。腸閉塞のリスクのある方には使えません。
―――グルコバイ・ベイスン・セイブル―――
以上7種類。僕が医者になった頃の、SU剤しか使う薬のなかった時代に比べて、隔世の感があります。