糖尿病関連情報

 開業15年


開業して15年が経過しました

「まだ」なのか、「もう」なのか、この4月で片岡内科クリニック開業から15年となります。
15周年という区切りに、今回は自分のもともとの専門分野である脂質について皆さんにお伝えしてみましょう。
僕が米国で行っていた研究は糖尿病の中でも、その脂質代謝についてです。
この分野は最近少し置き去りにされているように見えます。
というのも、昨今は糖尿病に合併した脂質異常には、「まずスタチン」(スタチンとは、ピタバスタチンやアトルバスタチン、ロスバスタチンなどの、一般名の末尾にスタチンという名前の付く薬物です。)を投与しておく。
スタチンでコレステロールを下げておけば、あまり個々の病態を詳しく検討しなくても、随分と動脈硬化の発症を防いでくれる。
そのため、研究者の興味は薄れているのでしょう、昨年の中四国糖尿病学会で脂質関連の発表は、僕のものを含めて3題しかありませんでした。
しかも、他の2題は症例報告でした。
しかし、本当は糖尿病の病態をきちんと理解するには、脂質代謝がかなり重要です。
糖尿病で起こりやすい「動脈硬化」、その成り立ちは、中性脂肪をたくさん蓄えた大型の脂肪細胞からいろんな悪い物質が分泌されることに始まりますし、血管に溜まってくるのは糖尿病といえども、糖でなくコレステロールです。
いかに中性脂肪やコレステロールが動脈硬化形成に重要か、ということが想像されるでしょう。
血中脂質の代表は中性脂肪とコレステロールですが、実はこれらは血液の中にふわふわそのままの形で浮いているわけではありません。
水と油のようなものですから、脂肪が血液と混じり合うには、疎水基と親水基を有するセッケンの様なもので油を包んだ粒子の形になる必要があります。
血中の、こうした脂肪を包んだ粒子を「リポ蛋白」といいます。
リポ蛋白はちょうどシュークリームのような格好で、中のクリームの部分が中性脂肪やコレステロールです。
リポ蛋白には、大・中・小・ミニの4種類があり、大きさによってその働きが異なる。最も大きいものは食べた脂質を運搬するもの(カイロミクロン)で、これは通常数分で血中から消失するために、平生は3種類のみ。
中くらいのもの(VLDL)が主に中性脂肪を運搬し、小さいもの(LDL)が主にコレステロールを運搬しますが、この小さいもの(LDL)は中くらいのもの(VLDL)が原料となります。
ミニ(HDL)は、血管に溜まったコレステロールを持ち帰る。
普通の状態であれば、これらの粒子は悪さをせず、血管という体内のベルトコンベアーで必要な部署に運ばれていきます。
LDLが血中に多くなりすぎると、血管にコレステロールがたまりやすくなりますから、これは悪玉、と呼ばれますし、HDLは血管に溜まったコレステロールを掃除する働きですので、善玉と呼ばれます。
そしてそれぞれに含まれるコレステロールが悪玉コレステロール(LDL-C)、善玉コレステロール(HDL-C)ということになります。
インスリンは血糖を下げるだけでなく、脂質代謝に関与する酵素を調節しています。
特に、過食・運動不足などで内臓脂肪の蓄積が起こってくると、インスリンの働きが悪くなりこれらの代謝が狂ってくる。
肥満した大型脂肪細胞から大量に放出されたクリームが材料となり、肝臓で規格外の、でかいシュークリーム(大型VLDL)がどんどんできる。
そうすると小さいシュークリームの方は規格外の、さらに小さいものとなり(小粒子LDL)、これもたくさんできる。
さらに、インスリンの作用不足で、中のクリームを処理する酵素が働きにくくて、ベルトコンベアーにでかいシュークリームの破片や小さいシュークリームが溜まった状態になってしまう。
これら規格外のものは不良品として血管壁のお掃除ロボット(マクロファージ)に捕捉され、結局それらの中身であるコレステロールがその場所(血管壁)に蓄積していく。
溜まったコレステロールを持ち帰るミニ(HDL)も減少してしまい、清掃能力が低下するため、血管壁のコレステロール蓄積がどんどん進む、ということになります。
どうでしょう。伝わりにくかったですかね。
でも、糖尿病でも動脈硬化を惹起するのが糖でなく、脂質であるということ、その諸悪の根源が内臓肥満にあるということがわかっていただければ十分かな。

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