糖尿病足病変を予防しよう
僕がまだ安佐市民病院に勤務しているころ、「糖尿病かるた」というのを作りました。
片岡内科クリニックのホームページにある「糖尿病関連情報」にそのオリジナルのものがあります。
興味がおありの方はホームページから探してみてください。
そこにはあいうえお順に糖尿病に関連したかるたの文句が並べてあります。
そのいちばん最初の文字である「あ」の文句が「あしはわがみ(足はわが身)」というものになります。
説明書きにこう書いています。
『足はわが身―糖尿病の一番の治療は動機づけです。
糖の治療を怠っていたらこうなりますよ、ということでよく出てくる写真が壊疽の写真だと思います。
まず、この文句を持ってきたわけですが、「明日はわが身」という慣用句をひねっています。
糖尿病への取り組みがいい加減であればこういうことも将来の自分に降りかかってくるかもしれない、という意味も含んでいます―』
足は自分の目からすると体の一番遠いところに存在し、ついつい目の行き届きにくい場所です。
ですからわざわざ足を点検しておきましょう、と注意を喚起しているわけです。
壊疽(えそ)や潰瘍など、足のトラブルをひっくるめて、最近は糖尿病足病変といいます。
これからのシーズン、皮膚が乾燥して、かかとのひび割れなどもできやすい、血行も悪くなりがちで、暖房器具で熱傷も起こりやすい、そのため冬季には特に注意が必要と考えられます。
今回はこの糖尿病足病変を予防する、をテーマとします。
なぜ糖尿病の方に足病変が多いのか。
それは、ひとつには合併症の存在、もうひとつは高血糖が原因として挙げられます。
合併症として、神経障害の進んだ方、感覚が鈍くなっていて、怪我があっても気づかない。
足トラブルの発見がその分遅れて重症化しやすい。
それから足の血管の動脈硬化が進んでいる方、動脈硬化のために血流が悪くなっていると、患部に酸素や栄養が行き届かない。
傷ができても治らないし、どんどんひどくなる。
それから血糖コントロールの不良な方。高血糖の状態は感染症を連れてきやすい。
組織を修復するためのたんぱく質にも糖がくっついて働きが悪くなり、感染が治るどころか重症化する。
ということは、特にこうした合併症のある方や血糖値が高い方で、より注意が必要ということになります。
具体的には、
1、今までに足病変の既往のある方、
2、透析中の方、
3、足の動脈硬化がある方、
4、ヘビースモーカー、
5、神経障害が進んでいる方、
6、足や爪の変形、たこや魚の目、水虫のある方、
7、足病変のことを知らない方、
8、血糖が高めの方、
9、視力障害の方、
10、外傷を受けやすい職業の方、
11、独居でご高齢の方、衛生保持の不十分な方
(糖尿病療養指導ガイドブック2018より抜粋、改変)
糖尿病足病変予防の基本は毎日足を点検することですが、風呂上がり、あるいは足浴後に足をよく拭いたあとで保湿クリームを隅々まで塗る習慣をつけられるのが良いのではないでしょうか。
毎日クリームを塗っていると、早目に足の異常に気付くことができる。
保湿には、尿素の入ったクリームを用いますが、当院でも皮膚が乾燥気味の方に積極的に処方を行っています。
たこや魚の目なんかでも、自分で処置しようとして、それでひどいことになる場合がありますので、気になることがあったら、ちょっとした異変でもスタッフに相談していただきたい。
当院では神経障害や血管障害のチェック、必要な場合には皮膚科や整形外科など他科への紹介も行います。
足の点検の仕方だけでなく、靴下や、靴や、中敷き、また爪の切り方、さらには冬季の暖房器具についてなど、アドバイスを行うことができます。
(特に暖房器具ではあんかや湯たんぽを足もとに、というのは厳禁。こたつやストーブといったもので局所的に温めるものも危ない。部屋全体を温めるのが大正解です。)
ちなみに、糖尿病かるたの「み」は、「みて、さわって、あしのてんけん(見て、触って、足の点検)」です。