糖尿病関連情報

 

 「同化」と「異化」


 ヒトは食事を取り込んで生きています。
食物を口から摂取すると、三大栄養素のうち、炭水化物は単糖に、タンパク質はアミノ酸に、脂質は脂肪酸などの低分子のものに砕かれて、体内の臓器に運ばれます。
それらはエネルギーとして使われるか、体内に取り込まれて身体を形成する元となります。
栄養素を取り入れる方向の代謝が「同化」、栄養素を使っていく方向の代謝が「異化」ということになります。
同化と異化のバランスが取れている状態は体重の増減はありません。
ヒトは一日のうちで同化と異化を繰り返しています。
食後には同化が進み、空腹時には異化が進みます。
では、同化にかかわるホルモンは何でしょう?
それが皆さんよくご存じのインスリンです。
インスリンは血糖を下げるホルモン、というのは正確ではありません。
インスリンは食べたものを身につけるホルモン、すなわち同化に必要なホルモンです。
筋肉や脂肪が分解していくのを防ぐのもインスリンの役目ですし、肝臓から糖があふれ出すのを留めおくのもインスリンの働きです。
そしてこのホルモンが過剰な栄養素を脂肪として蓄積することになります。

 では、異化に働くホルモンは?
それはグルカゴンです。
インスリンほど馴染みのない物質かもしれません。
このホルモンはやはりインスリンと同様に膵臓から分泌され、インスリンとは逆に異化の方向に働きます。
飢餓状態の時には、外からブドウ糖は入ってきません。
脳の活動にはブドウ糖が必要ですので、空腹時にはグルカゴンが、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンという貯蔵糖を分解し、 さらには筋肉や脂肪を分解してブドウ糖を作り出します。
そのため、グルカゴンが過剰だったら、血液中にブドウ糖が過剰に供給される、そのため血糖値が上昇する、というのがお分かりいただけるでしょうか。

 ずっと長い間、糖尿病はインスリンが不足するために血糖値の上昇する病気だと信じられてきました。
しかし、最近、それだけでなく、グルカゴンの過剰が起こっていることがむしろ主因だ、と言われるようになってきました。
過体重となることで、自然の防御反応としてもうこれ以上太らない様にする、つまり過剰な同化作用に対抗して異化を進めようとグルカゴンが出動し、そのため血糖値が上昇してしまう。
ですから、決してインスリンが血糖値を下げる良いホルモン、グルカゴンは血糖値を上げる悪いホルモンというわけではありません。
むしろ過剰なインスリンによって細胞が成長しやすくなる、ということは老化しやすくなりますし、さらには癌細胞も生育しやすいということになります。
インスリンは多すぎると厄介なホルモンなのです。

 現代人は三食だけでなく、間にも色々食べることで、同化の時間がより多くなっており、相対的に異化に用いられる時間が減少しています。
重要なのは「異化」の時間です。
図のように同化の段階から異化の段階に移るのを早めていくのが食事療法、運動療法ということになります。
また、メトホルミンやSGLT2阻害剤、注射薬のGLP-1受容体作動薬といった一部の薬剤にもそういう働きがあります。

   

 米国の実験で、アカゲザルのカロリーを30%減らして育てた場合、自由に餌を食べたグループに比較して生活習慣病が少なく、 見た目も色つやがよく、長生きだったということです。
同化<異化という風に傾いたほうが、どうやら元気で長生き、ということのようです。
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