糖尿病関連情報

メタボリックシンドローム再び (2006.6.15)

メタボリックシンドロームについては当院にて再三にわたり掲示を行ってきました。昨年の内科学会で日本でのメタボリックシンドロームの診断基準が定められましたが、それにつきましてもいち早くお伝えしてきています。少し、そのおさらいをしてみましょう。

へそ周りが男性で85cm、女性で90cm以上の方で高血糖(空腹時血糖110mg/dl以上)、高血圧(130/85mmHg以上)、高脂血症(中性脂肪150mg/dl以上あるいはHDL[善玉]-コレステロール40mg/dl未満)のうちの二つ以上ある方がこれに該当します。高脂血症といっても総コレステロールあるいはLDL-[悪玉]コレステロールの高い方は診断基準に入っていません。コレステロールそのものは肥満と強い関連があるわけではありませんし、それだけですでに動脈硬化を起こしやすいことがはっきりしているからです。そのためコレステロールはメタボリックシンドロームとは独立した危険因子ということになります。(もちろん、メタボリックシンドロームに加えて、コレステロールも高ければなおのこと管理を厳重に行わなければいけません。)

メタボリックシンドロームという疾患概念の背景にあるのは、本邦で1980年代から大阪大学を中心に行われたCTスキャンによる肥満の研究です。動脈硬化と関連する肥満は実は内臓(胃の周囲や腸間膜周囲)についた脂肪が主体であり、この内臓脂肪は食べ過ぎ・運動不足といった悪しき生活習慣で容易につきやすく、そういった生活習慣を是正するととれやすいものです。今までの研究で内臓脂肪の絶対量はへその高さの横断面でみると100cm2以上のものが危険ということがわかりました。しかし、CT検査は実地臨床上簡便な指標ではないので、その内臓脂肪面積100cm2に相当するへそ周りの周囲径を求めよう、ということになりました。そういう経緯で内臓肥満の基準が男性で85cm、女性で90cm以上となったのです。しかし、この基準はあくまでおおよその目安ですから、自分のへそ周りは基準より小さいから大丈夫だ、というものではありません。この適正なへそ周り周囲径は多少人によってばらつきがあります。

先日も報道ステーションで古館氏が、疑問1;なぜ、男性の基準は85cmと諸外国よりも厳しいのか。疑問2;メタボリックシンドロームは本当に危険なのだろうか、と問いかけていましたが、こうした意見は随分的はずれなものではないかと思いました。重要なのは腹囲の具体的な数値をいくらにするか、といった瑣末な問題ではありません。日本人が実際にこの数十年の間にずいぶん太ってきているのです。またそれが脳梗塞、心筋梗塞といった重大な結果を招いています。具体的な数値が問題ではなく、体重の増加イコール寿命を縮める元となるのだという認識が必要なのです。

たった1kgの体重の増加といっても実際にその重みを手にしてみると「これは、体に悪いだろうな」と思わせます。今回体脂肪1kgの模型を待合室においておりますので皆さん是非手にとってみてください。同様の感想を持っていただけるのではないかなと思っています。

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