膵臓(すい臓)癌の早期発見
(院長 片岡伸久朗)
『沈黙の臓器』とネットで検索すると「肝臓」と「膵臓(すい臓)」の二つが出てきます。
どちらも自覚症状がほとんどなく、気が付いた時には既に病気が進行している、といったことがあるためそう呼ばれます。
肝臓の病気の進行具合はある程度「Fib-4 index」という数値でとらえることができます。
当院では、皆さんの生化学検査の結果に、三年前あたりからこの項目を載せています。
それを見て、肝臓の線維化が進んでいるような人は、次の段階の血液検査や画像診断、専門医への紹介なりをさせていただき、肝硬変や肝臓癌の早期発見・予防に役立てています。
では、膵臓はどうでしょう?膵臓に関しては、今まで膵臓癌を早期に発見するためのシステムはありませんでした。
全国に先駆けてそのための検査体系を築かれたのが、JA尾道総合病院の花田敬士先生です。
それが「尾道方式」と呼ばれていますが、そのことがきっかけとなって、全国に膵臓癌早期発見プロジェクトが広がっていきました。
広島県では、「Hi-PEACE(ハイピース)プロジェクト」といいます。
こじつけのようですが、「Hi-PEACE」は「Hiroshima Pancreas Cancer Early Diagnosis with Collaboration
and Examination」の略であり、この「ハイピース・プロジェクト」は広島県のホームページにも載っています(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/pancreas-cancer/)。
膵臓専門医への紹介の目安は表のとおりです。
膵臓癌の危険因子を有しているかどうかが最も重要となります。
3項目の低危険因子があれば専門医に紹介です。
そのひとつに糖尿病がありますので、糖尿病の方はすでに低危険因子を一つ持っていることになります。
これにもう二つの低危険因子が加われば、一度膵臓専門医に紹介することになります。膵酵素異常という低危険因子がありますが、このプロジェクトが始まってから、当院では膵酵素のアミラーゼ、リパーゼという項目をルーチン検査に追加しています。
これらの低危険因子の2項目にだけ該当する方には、膵腫瘍マーカー(当院ではCA-19-9)をチェックさせていただいています。
高危険因子は、膵臓癌の家族歴が濃厚な方、糖尿病が新規に発症した方や、糖尿病の方で血糖コントロールが急激に悪化したような場合、あるいは膵の腫瘍マーカー高値の方がそれに該当します。
これらはあくまで拾い上げを目的としたものですから、膵臓の専門医を受診することになった場合でも悲観されるようなことはありません。
少しでも可能性のある方はできるだけ多く掬い上げるように網を広げているわけですから。
実は僕の叔父は大阪で内科医をしていましたが、膵臓癌で亡くなりました。
医者でも自分の膵臓癌に気づけなかったのです。
当時こうしたプログラムがあれば、もっと早期のうちに発見して治療することができていたのかもしれません。