安佐医学会賞をいただきました

(院長 片岡伸久朗)

このかたくり新聞は3か月ごとに発行しており、もう第91号となります。
振り返って不思議に思うのは、自分の専門分野である「糖尿病と脂質代謝」について一度も触れてきていないことです。
なぜ触れずにきてしまったのかを考えてみるに、この話題に触れるとするなら中性脂肪やコレステロールの数値の話だけでなく、「リポ蛋白」という小難しい概念からお話しなければならないからだと思います。
みなさんは「リポ蛋白」という単語になじみがないことでしょう。
でも僕は30年以上前から一貫してこの研究を行ってきました。今回はこの「リポ蛋白」について説明を試みてみましょう。

実は中性脂肪やコレステロールは血中にそのままの形で溶け込んでいるわけではありません。
例えれば水と油ですからそのままの形では混ざり合いませんね。
血液中で溶け込むためには、石鹸のような粒子を作る必要があります。
石鹸は界面活性剤により内側に油と混ざる疎水基を持ち、外側に水と混ざるための親水基を有しており、油汚れを中に取り込むことができるような構造になっています。

「リポ蛋白」は同じように粒子になっていて中に中性脂肪やコレステロールをため込み、血液中で運搬されています。
このリポ蛋白にはいくつか種類があってそれらは比重の違いで分けられますが、最も重いものがHDLでこれが善玉のリポ蛋白です。
なぜ善玉といわれるかというと、血管の中にたまったコレステロールを掃除する働きをするからです。
そのHDL中のコレステロールがHDL-コレステロールで、これがいわゆる善玉コレステロールです。
そしてHDLよりやや比重の軽い粒子がLDLで、この中のコレステロールの量を測ったものがLDL-コレステロールということになります。
LDLはコレステロールを肝臓から末梢に運搬する大事なものですが、多すぎると血管内に取り込まれてプラークの元になります。
そしてそのプラークがはじけると心筋梗塞や脳梗塞が起こります。
ですからLDLは少ない方がよい。
つまりLDL-コレステロールは低い方がよいということになります。
みなさんも平生の検査の結果、あるいは検診時にLDL-コレステロールやHDL-コレステロールの値について気にしておられることと思います。
実はこの、コレステロールを運搬するLDLという粒子には大きいサイズと小さいサイズのものがあって、小さいものはとりわけ動脈硬化を起こしやすい。
そして糖尿病やメタボではLDLのサイズは小さくなりやすいということがわかっています。

今回の研究発表は「家族性高コレステロール血症患者に合併した2型糖尿病の動脈硬化に与える影響の検討」というものでした。
家族性高コレステロール血症というコレステロールが非常に高くなりやすい疾患を有する方でも、糖尿病が合併しておられる方では、糖尿病のない家族性高コレステロール血症の方よりLDLの粒子は小さくなっており、より動脈硬化が起こってきやすいのではないだろうか?
家族性高コレステロール血症の方のLDL-コレステロールの管理基準は現在のガイドラインでは糖尿病のあるなしに関わらず100mg/dl未満となっているけれど、糖尿病のある方だともっと厳しく下げておいた方がいいのではなかろうか?
そのことを検証しました。
その結果、やはり我々が推測したように、糖尿病と家族性高コレステロール血症を合併して持っておられる方ではより動脈硬化が進みやすく、今の管理基準よりさらに厳しくコレステロール値を下げるのがよいという結論に至りました。
それを昨年11月16日、安佐医師会館で行われた安佐医学会において発表し、安佐医学会賞をいただいたというわけです。

今回の賞は僕が代表としていただいたものの、当院スタッフ全員でいただいたものと考えています。
クリニックにとって名誉なことですし、これからも臨床研究を続けていく励みにもなると考えます。

(ごめんなさい。冒頭で言ったように、今回の脂質代謝の話はやっぱり小難しい話になってしまいました。)