SGLT2阻害薬という薬

今回は、またまた糖尿病の新しい薬が出る、というお話です。
その薬については数年前から論文や記事を目にしていましたが、実際に使用された方のお話を伺う機会は今までありませんでした。

このたび、滋賀医科大学 柏木教授のご講演で、その新薬の有用性や安全性などお聞きすることができましたので、その時にあったお話をもとにしてご紹介しましょう。
来年(2014年)いっぺんに数社から発売予定だそうです。

その薬の名前は「SGLT2阻害薬」。
作用機序は、簡単に言うと「余分な血中の糖分を尿に排出する。」ということになります。
 通常血糖値が160~180mg/dlになってはじめて尿中に糖が出てきます。ですから、健常な人ではいつ検尿しても尿糖は出ていませんが、糖尿病になると、血糖が高くなるにしたがって尿糖が出現、さらに高くなればなるほど、その量は多くなります。
 しかし、あまり高くなりすぎると、このSGLT2という酵素が働いて尿糖の排泄を抑制しているそうです。 そこでこの酵素を阻害すると、尿糖の再吸収が抑制され、どんどん尿中に糖が排出されて、血糖値は低下する、というわけです。
 昔から動物実験などで使用される薬剤に「フロリジン」という物質がありました。
やはり、そのフロリジンを使ったモデル動物で血糖値が低下し、インスリン抵抗性が改善する、インスリン分泌も改善する、ということが示されたのが創薬の発端だったようです。

この薬の期待される効果は下記のとおりです。

  • 血糖コントロールが改善する – 約0.8~1%程度HbA1cが低下する-  ようです。
  • この薬剤単独では低血糖をきたすことはない
    – インスリンを分泌させる薬ではありませんから –
  • 体重減少が期待できる
    – 体重減少は24週の投与で3kg程度 – だそうです。
  • 血圧が低下するし、脂質異常症が改善する。
  • 脂肪肝が改善する。

従来の糖尿病薬であるSU剤、BG剤、DPP-4阻害剤のどれに上乗せしても、上乗せ効果は同じだそうです。 一方で心配されるのは、下記のようなことだと思います。

  • 多尿・頻尿傾向となるのは、あまり嬉しくない。
  • 夏場は熱中症を助長したりはしないだろうか。
  • 尿糖がどんどん出ることで、膀胱炎など尿路感染症が起こりやすい可能性がある。
  • 余りに血糖が高い状態だと多尿が高じて脱水になり、極端になると高血糖高浸透圧症候群という危険な状態が生じてくることがあるが、そういったリスクが増加しないだろうか。
  • 低炭水化物ダイエットと似たような状態になるため、脂肪が燃焼して尿中にケトン体という物質が出てきやすい。そうするとケトアシドーシスという、これまた危険な病態を起こしやすかったりしないだろうか。 また、そのケトアシドーシスと鑑別が困難だったりしないか。
  • 尿中のカルシウム排泄が増えるから、尿路結石ができやすくなるのかもしれない。骨に与える影響はどうなのだろう。

まったく新しい類の薬ですので、いろんなことに注意しながらゆっくり使用してみることにはなると思いますが、特に、従来の薬剤でコントロールの困難な肥満傾向の方に有用な可能性があると考えています。